タバコの煙に含まれるタール(ヤニ)には多くの発がん物質や動脈硬化促進物質が含まれており、慢性閉塞性肺疾患を発症させたり喘息を難治化させたり、心筋梗塞や脳卒中やガン(特に肺がん、喉頭がん、食道がん、膀胱がんなど)を増やしたりします。これらの疾患に対しタバコ病という呼び名もあるくらいです。喫煙者の寿命は10年短く(BML 2004;328:1519)、日本だけでも年間11万人がタバコ病で死亡しています。しかし禁煙することによって、タバコ病の発症リスクは低下し、死亡率も禁煙後10~15年ほどで非喫煙者と同程度に改善されることや余命が延長することが分かっています。
そのような有害性は有名ですが、いざ禁煙しようとしても簡単には止められません。タバコにはニコチンと言う依存性を来す物質が入っており、ニコチンが切れるとイライラしたり集中力が低下したりして、次の一本が吸いたくなってしまうからです。昔からニコチンを利用した禁煙補助剤(ガムや貼付剤)を用いて行う禁煙指導がありましたが、成功率は高くなくありませんでした。しかし現在バレニクリン(商品名チャンピックス)という薬剤があり、成功率は非常に高まりました。
バレニクリンは健康保険適用の薬剤で二つの薬効を有しています。ひとつは禁煙により発生する集中力低下やイライラ感を予防するように脳細胞そのものを刺激する効果、もうひとつはタバコを吸ってしまってニコチンが血液中に入ってきてしまった場合、それが脳細胞にくっつこうとしますが、バレニクリンはそこも阻害し、実際に喫煙した際に得られる爽快感を感じにくくするという働きです。主な副作用には吐き気や頭痛がありますが、この薬剤のお蔭で約7割の方が禁煙に成功しています。
禁煙外来ご希望の方は、保険証をご持参され受付にて「禁煙外来希望」とおっしゃってください。細かい説明を行いながら12週間で禁煙するプログラムでご指導をさせていただきます。なお12週間で発生する費用は健康保険利用で3割負担の方で、診療所、薬局を合わせた金額で約19,000円です。