見えてきたCKDの概念
− CKD治療最前線を拝聴して −

日時 2008年6月25日 19:30〜21:30
会場 ホテルグランコート名古屋
講師 名古屋大学大学院医学系研究科腎臓内科学 特任助教 安田宜成 先生

最近医療者の間で,CKDと言う名称をよく耳にするようになりました.CKDとはChronic Kidney Disease日本語で言えば「慢性腎臓病」となります.以前より慢性腎疾患と言う言葉は耳にすることはあったのですが,「慢性腎臓病」(以後はCKDと書きます)の定義がなされた理由や対応法について疑問に思っていました.でも今回この勉強会に参加して,かなり疑問を払拭することができました.

腎臓は腰の辺りに左右一個ずつあるオシッコを作る臓器です.普段はおとなしくせっせとオシッコを作って体の老廃物を排泄するように黙々と働いてくれています.ところが色々な病気でその働きが衰えて来る事があります.有名な病気として糖尿病性腎臓病,慢性腎炎,腎臓硬化症,多発性のう胞腎などがります.従来は疾患ごとに取り扱っていたのですが,どの疾患も治療が奏功せず腎臓機能が損なわれてしまうと,いずれは人工透析(2〜3日おきに透析センターに通って,体にたまった老廃物を透析装置を使って抜きます)に移行し,患者さんも通院や塩分水分の制限に煩わされます.また医療費も一人当たり年間500万円もかかり,日本だけでも年間1兆円以上が透析医療に費やされているそうです.さらにCKDに相当する人は,心筋梗塞や脳卒中のような動脈硬化疾患が多く合併することが分かってきました.

このような背景から,原因疾患を問わず一定の腎臓機能の障害に陥った状態をCKDと呼び,できるだけ早期に発見し,人工透析をしなくてはいけないような状態にならないよう治療を行なったり,合併する心臓病や脳梗塞の予防を図ることになったと言う訳です.

さて,腎臓の働きを調べる方法として,従来から血液中のクレアチニンと言う物質を使っています.しかしクレアチニンは筋肉の代謝産物なので,若い男性のように筋肉量の多い人は,腎臓の働きが正常なのに大きな値になってしまい,異常と判定されたり,ご高齢の女性のように筋肉量が少ない人は,腎臓が悪くてもクレアチニンは低く出てしまい,腎臓機能正常と判定されてしまうことがあります.そこで腎臓の働きを筋肉量や年齢に関係なく客観的に測れる指標として「糸球体ろ過量」(英語ではglomerular filtration rateと言います.略してGFR)が用いられることになりました.
さてCKDとは以下の状態を指します
@尿異常,腎臓の画像上の異常,血液検査,病理学的検査,このいずれかの検査で腎臓障害が明らかである場合(特に蛋白尿が重要)
AGFR<60ml/min/1.73m2
この@Aのいずれか,もしくは両者が共に3ヶ月以上存在すること
このようにして診断されたCKDにおける,私たち開業医の役割をまとめます.

まずCKDの早期発見です.例えば健康診断の結果,尿の異常を指摘されて受診した患者さんからCKDを探し出すこと.さらに既に糖尿病などで開業医を受診中の患者さんの中にもCKDに進展してしまう人がいる訳で,そのような患者さんにも目を光らせます.そして下記の@〜Bのうち,ひとつでも満たす場合は,腎臓専門医を紹介することが望ましいとされています.
@尿の中の蛋白質の量が0.5g/gクレアチニン以上,または2+以上の場合
AGFRが50ml/min/1.73m2未満の場合
B蛋白尿と血尿がともに陽性の場合(1+以上)
また紹介するほではない軽症のCKDと診断された場合,私たち開業医は原因疾患の管理を行ないます.例えば
さらに生活習慣の是正を指導します.具体的には
勉強会では,専門的になりますが腎機能障害や薬物の副作用によって生じる高カリウム血症の対策(代謝性アシドーシスはNa-Cl<32で疑われるがその場合は重曹1〜3g/日の投与が良い.カリウムの多い芋・豆・野菜などは茹でた上で,汁も捨てて食する.フルーツはできるだけ食べない.特にバナナ,キウイーフルーツ)や,CKDで使用を注意しなくてはいけない薬物(NASAIDS,H2ブロッカー,ビタミンD3製剤,抗菌剤,アロプリノール)の話,病院で治療方針が決まったあと,開業医に患者さんが戻される病診連携の話などが取り上げられ,会は終了しました.